皆さん、こんにちは。綾瀬市にある武内歯科医院です。
インプラント治療は、インプラント体とよばれる歯の根っこに相当するものを顎の骨に埋め込むことにより、失った歯をおぎなう治療方法です。義歯やブリッジと異なり、健康な歯を削ることなく、数十年にわたって使用できます。
しかし、インプラントを長持ちさせるには正しいケアが必要です。今回は、インプラント治療後に必要なインプラントの磨き方や歯磨き粉を選ぶポイントをまとめます。
インプラント治療後の歯磨きの重要性
インプラントの人工歯は虫歯になることはありません。
しかし、インプラント周りの歯茎は、プラークや歯石が溜まり細菌が繁殖しやすくなります。
細菌が繁殖した状態が長くなると、インプラント周囲の粘膜に炎症が起こり、周囲の歯茎の腫れや出血など歯周病に似た症状が生じます。炎症が強くなると、インプラントを支えていた骨が溶け、最悪の場合インプラントが抜け落ちることがあるのです。
日本歯周病学会の調査によると、インプラント治療後に軽度の炎症がある患者は約30%、骨まで溶ける強い炎症が起こる患者は約10%といわれています。つまり、インプラント周囲の炎症は比較的起きやすいと考えられます。
インプラントを長持ちさせるためにも、日常の歯磨きをしっかり行い、インプラントの周りを清潔に保つことが重要です。
インプラント治療後の歯ブラシ・歯磨き粉の選び方
では、具体的にどのような歯ブラシと歯磨き粉を使えばよいのでしょうか。以下、歯ブラシと歯磨き粉の選び方のポイントについてまとめます。
インプラントの清掃に適した歯ブラシを選ぶポイント
歯ブラシの選び方のポイントは、以下のとおりです。
毛先が細い歯ブラシを選ぶ
インプラントと歯茎の間は汚れが付着しやすい部位なので、きちんと磨くために毛先が細い歯ブラシを使用しましょう。また、インプラントと歯茎の境目を磨くには、毛先がひとつにまとまったタフトブラシも非常に有用です。
歯間ブラシやフロスを使用する
食べ物などの汚れは、歯とインプラントの間に溜まりやすい傾向にあります。そのため、歯ブラシだけではなく、歯と歯の間を磨く歯間ブラシやフロスを使用しましょう。
治療後の期間ごとに歯ブラシの硬さを変える
インプラント治療が終了した直後は、歯茎の傷が完全に治っていません。この状態で硬い歯ブラシを使用すると、歯茎が傷つく原因になります。
歯茎の傷が回復するまでは、柔らかめの歯ブラシを使用しましょう。傷口がよくなったあとは、磨きやすい硬さの歯ブラシを使用しましょう。
インプラントの清掃に適した歯磨き粉を選ぶポイント
歯磨き粉の選び方のポイントは、以下のとおりです。
フッ素入りの歯磨き粉は使用しても問題ない
インプラントにはチタンが使われています。フッ素がチタンに結合すると、チタンの表面がザラザラになり、プラークなどの汚れが付着しやすくなります。
しかし、この現象は高濃度のフッ素を使用した場合であり、薬局やコンビニなどで販売されている歯磨き粉はフッ素の濃度が低いです。そのため、インプラント清掃に市販のフッ素入りの歯磨き粉を用いても問題ありません。
大きな研磨剤が入っている歯磨き粉は使用しない
歯磨きの中には、歯の表面の汚れを取るために研磨剤(けんまざい)とよばれる成分が入っています。
研磨剤が大きいとインプラントと歯茎のすき間に入り込み、歯茎の炎症を引き起こすことがあります。そのため、舌で触って研磨剤のつぶがはっきりわかる歯磨き粉はさけましょう。
また、大きな研磨剤が入っている歯磨き粉の成分には、ケイ素や炭酸カルシウムが含まれているので、ケイ素や炭酸カルシウムを含有した歯磨き粉はさけましょう。
歯科医師に相談する
歯磨き粉には、虫歯を予防するのに特化したものや歯茎の炎症をおさえるのに特化したものなど、さまざまな種類があります。
どの歯磨き粉を購入すべきかわからない場合は、歯科医師に相談しましょう。
インプラントの正しい歯磨き方法
インプラントを長持ちさせるためには、正しい磨き方が重要です。以下、インプラントの正しい磨き方をまとめます。
毛先をうまく使う
効果的な歯磨きの方法は、歯ブラシの毛先を磨きたい場所にあて、毛先を細かく振動させるように磨きます。
インプラントと歯茎の境目を磨くときは、歯ブラシをインプラントの人工歯に対して45度に傾けて磨きます。45度に傾けることで、毛先がインプラントと歯茎の境目に入り綺麗に磨くことができるのです。
歯ブラシの持ち方に注意する
親指、人差し指、中指の3本の指を使い、ペンを持つように歯ブラシを持ちましょう。
この持ち方により、磨いたときに余計な力がかからないため、インプラントを傷つけることなく磨くことができます。さらに、磨くときの角度をコントロールしやすくなります。
磨く順番を決める
磨き残しを防ぐために、歯磨きのときは磨く順番を決めましょう。磨く順番は、一筆書きのように磨くのがよいでしょう。
例えば、最初に右上奥歯の表から左上奥歯の表まで磨きます。その後、左上奥歯の裏から右上奥歯の裏を磨くといったように、順番を決めることで磨き残しを最小限におさえることができます。
フロスで磨いてから歯ブラシで磨く
歯ブラシとフロスを行う場合、フロスで磨いてから歯ブラシを行いましょう。
フロスで磨いたあとに歯ブラシを行うほうが、歯の汚れを効率よく落とすことができ、虫歯予防に効果のあるフッ素が歯全体に行き渡ります。
定期的なメンテナンスでインプラントの寿命を延ばす
インプラントを長持ちさせるためには、日常生活の歯磨きに加え、歯科医院での定期的なメンテナンスが必要です。
以下にメンテナンス内容をまとめます。
噛み合わせの確認
噛み合わせを調べる紙を噛んでもらい、インプラントの噛み合わせの状態を確認します。
インプラントの噛み合わせが悪いと、人工歯が割れる原因になるのです。インプラントが強くあたっている場合は、人工歯を削って調節します。
歯茎の確認
インプラント周りの歯茎が腫れていないか、赤くなっていないか確認します。また、インプラントと歯茎の間にある歯周ポケットとよばれるすき間の深さを確認します。
レントゲン検査
レントゲンを撮影し、インプラントを埋めた部位の骨の状態を確認します。
インプラント周りの歯茎の炎症が強いと、骨が溶けていることがあるのです。また、上の奥歯のインプラントに炎症が起こると、上顎洞とよばれる骨の中の空洞の粘膜に炎症が広がることがあります。
レントゲン写真では、上顎洞の状態も確認します。
ブラッシング指導
お口の中を観察し、磨き残しがある場合はブラッシング指導します。
ブラッシング指導では、歯ブラシのあて方やフロスの使い方などを指導します。
歯のクリーニング
歯のクリーニングでは、歯石など日常の歯磨きで取ることのできない汚れを専用の機械で除去します。また、インプラントのクリーニングでは人工歯の部分を取り外し、歯ブラシが届かないところも磨きます。
まとめ
今回は、インプラント治療後の歯磨きについて解説しました。
インプラントの人工歯は虫歯になることはありませんが、清掃状態が悪いとインプラント周りの歯茎に炎症が起こります。炎症が悪化すると、骨が溶けインプラントが取れることがあります。
こうした事態を防ぐためにも、日頃からブラッシングをきちんと行いましょう。また、インプラントの状態の確認や細かな汚れを取るためにも、必ず定期的なメンテナンスを受けましょう。
インプラント治療後の歯磨きでお悩みの方や不明点がございましたら、神奈川県綾瀬市にある武内歯科医院にお気軽にご相談ください!