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インプラント治療後の歯磨き!最適なケアで長持ちさせる方法

皆さん、こんにちは。綾瀬市にある武内歯科医院です。

インプラントが数本転がっている

インプラント治療は、インプラント体とよばれる歯の根っこに相当するものを顎の骨に埋め込むことにより、失った歯をおぎなう治療方法です。義歯やブリッジと異なり、健康な歯を削ることなく、数十年にわたって使用できます。

しかし、インプラントを長持ちさせるには正しいケアが必要です。今回は、インプラント治療後に必要なインプラントの磨き方や歯磨き粉を選ぶポイントをまとめます。

インプラント治療後の歯磨きの重要性

笑顔で歯を磨いている女性

インプラントの人工歯は虫歯になることはありません。

しかし、インプラント周りの歯茎は、プラークや歯石が溜まり細菌が繁殖しやすくなります。

細菌が繁殖した状態が長くなると、インプラント周囲の粘膜に炎症が起こり、周囲の歯茎の腫れや出血など歯周病に似た症状が生じます。炎症が強くなると、インプラントを支えていた骨が溶け、最悪の場合インプラントが抜け落ちることがあるのです。

日本歯周病学会の調査によると、インプラント治療後に軽度の炎症がある患者は約30%、骨まで溶ける強い炎症が起こる患者は約10%といわれています。つまり、インプラント周囲の炎症は比較的起きやすいと考えられます。

インプラントを長持ちさせるためにも、日常の歯磨きをしっかり行い、インプラントの周りを清潔に保つことが重要です。

インプラント治療後の歯ブラシ・歯磨き粉の選び方

歯ブラシと歯磨き粉

では、具体的にどのような歯ブラシと歯磨き粉を使えばよいのでしょうか。以下、歯ブラシと歯磨き粉の選び方のポイントについてまとめます。

インプラントの清掃に適した歯ブラシを選ぶポイント

歯ブラシの選び方のポイントは、以下のとおりです。

毛先が細い歯ブラシを選ぶ

インプラントと歯茎の間は汚れが付着しやすい部位なので、きちんと磨くために毛先が細い歯ブラシを使用しましょう。また、インプラントと歯茎の境目を磨くには、毛先がひとつにまとまったタフトブラシも非常に有用です。

歯間ブラシやフロスを使用する

食べ物などの汚れは、歯とインプラントの間に溜まりやすい傾向にあります。そのため、歯ブラシだけではなく、歯と歯の間を磨く歯間ブラシやフロスを使用しましょう。

治療後の期間ごとに歯ブラシの硬さを変える

インプラント治療が終了した直後は、歯茎の傷が完全に治っていません。この状態で硬い歯ブラシを使用すると、歯茎が傷つく原因になります。

歯茎の傷が回復するまでは、柔らかめの歯ブラシを使用しましょう。傷口がよくなったあとは、磨きやすい硬さの歯ブラシを使用しましょう。

インプラントの清掃に適した歯磨き粉を選ぶポイント

歯磨き粉の選び方のポイントは、以下のとおりです。

フッ素入りの歯磨き粉は使用しても問題ない

インプラントにはチタンが使われています。フッ素がチタンに結合すると、チタンの表面がザラザラになり、プラークなどの汚れが付着しやすくなります。

しかし、この現象は高濃度のフッ素を使用した場合であり、薬局やコンビニなどで販売されている歯磨き粉はフッ素の濃度が低いです。そのため、インプラント清掃に市販のフッ素入りの歯磨き粉を用いても問題ありません。

大きな研磨剤が入っている歯磨き粉は使用しない

歯磨きの中には、歯の表面の汚れを取るために研磨剤(けんまざい)とよばれる成分が入っています。

研磨剤が大きいとインプラントと歯茎のすき間に入り込み、歯茎の炎症を引き起こすことがあります。そのため、舌で触って研磨剤のつぶがはっきりわかる歯磨き粉はさけましょう。

また、大きな研磨剤が入っている歯磨き粉の成分には、ケイ素や炭酸カルシウムが含まれているので、ケイ素や炭酸カルシウムを含有した歯磨き粉はさけましょう。

歯科医師に相談する

歯磨き粉には、虫歯を予防するのに特化したものや歯茎の炎症をおさえるのに特化したものなど、さまざまな種類があります。

どの歯磨き粉を購入すべきかわからない場合は、歯科医師に相談しましょう。

インプラントの正しい歯磨き方法

歯を磨いている女性

インプラントを長持ちさせるためには、正しい磨き方が重要です。以下、インプラントの正しい磨き方をまとめます。

毛先をうまく使う

効果的な歯磨きの方法は、歯ブラシの毛先を磨きたい場所にあて、毛先を細かく振動させるように磨きます。

インプラントと歯茎の境目を磨くときは、歯ブラシをインプラントの人工歯に対して45度に傾けて磨きます。45度に傾けることで、毛先がインプラントと歯茎の境目に入り綺麗に磨くことができるのです。

歯ブラシの持ち方に注意する

親指、人差し指、中指の3本の指を使い、ペンを持つように歯ブラシを持ちましょう。

この持ち方により、磨いたときに余計な力がかからないため、インプラントを傷つけることなく磨くことができます。さらに、磨くときの角度をコントロールしやすくなります。

磨く順番を決める

磨き残しを防ぐために、歯磨きのときは磨く順番を決めましょう。磨く順番は、一筆書きのように磨くのがよいでしょう。

例えば、最初に右上奥歯の表から左上奥歯の表まで磨きます。その後、左上奥歯の裏から右上奥歯の裏を磨くといったように、順番を決めることで磨き残しを最小限におさえることができます。

フロスで磨いてから歯ブラシで磨く

歯ブラシとフロスを行う場合、フロスで磨いてから歯ブラシを行いましょう。

フロスで磨いたあとに歯ブラシを行うほうが、歯の汚れを効率よく落とすことができ、虫歯予防に効果のあるフッ素が歯全体に行き渡ります。

定期的なメンテナンスでインプラントの寿命を延ばす

インプラントの模型と女性患者

インプラントを長持ちさせるためには、日常生活の歯磨きに加え、歯科医院での定期的なメンテナンスが必要です。

以下にメンテナンス内容をまとめます。

噛み合わせの確認

噛み合わせを調べる紙を噛んでもらい、インプラントの噛み合わせの状態を確認します。

インプラントの噛み合わせが悪いと、人工歯が割れる原因になるのです。インプラントが強くあたっている場合は、人工歯を削って調節します。

歯茎の確認

インプラント周りの歯茎が腫れていないか、赤くなっていないか確認します。また、インプラントと歯茎の間にある歯周ポケットとよばれるすき間の深さを確認します。

レントゲン検査

レントゲンを撮影し、インプラントを埋めた部位の骨の状態を確認します。

インプラント周りの歯茎の炎症が強いと、骨が溶けていることがあるのです。また、上の奥歯のインプラントに炎症が起こると、上顎洞とよばれる骨の中の空洞の粘膜に炎症が広がることがあります。

レントゲン写真では、上顎洞の状態も確認します。

ブラッシング指導

お口の中を観察し、磨き残しがある場合はブラッシング指導します。

ブラッシング指導では、歯ブラシのあて方やフロスの使い方などを指導します。

歯のクリーニング

歯のクリーニングでは、歯石など日常の歯磨きで取ることのできない汚れを専用の機械で除去します。また、インプラントのクリーニングでは人工歯の部分を取り外し、歯ブラシが届かないところも磨きます。

まとめ

ポイントを指さす男性医師

今回は、インプラント治療後の歯磨きについて解説しました。

インプラントの人工歯は虫歯になることはありませんが、清掃状態が悪いとインプラント周りの歯茎に炎症が起こります。炎症が悪化すると、骨が溶けインプラントが取れることがあります。

こうした事態を防ぐためにも、日頃からブラッシングをきちんと行いましょう。また、インプラントの状態の確認や細かな汚れを取るためにも、必ず定期的なメンテナンスを受けましょう。

インプラント治療後の歯磨きでお悩みの方や不明点がございましたら、神奈川県綾瀬市にある武内歯科医院にお気軽にご相談ください!

インプラントは抜けることがある?原因と対処法、注意点について解説!

皆さん、こんにちは。綾瀬市にある武内歯科医院です。

インプラントの模型を手に持った歯科医師

しっかり治療したはずのインプラントが抜けることはないのかと不安に思う方も多いでしょう。

今回はインプラントが抜けることはあるのか、原因・対処法・注意点などに関して解説します。

インプラントは抜けることがあるのか

椅子に座ってパソコンを手に持った女性が考え事をしている

インプラントは審美性がよく、咬合力が優れていることに加えて、長期間使えるのが魅力です。治療完了後から10年経過しても使用できている方の割合は9割といわれています。

ただし、セルフケアやメンテナンスがなされていることが前提です。これらを怠れば数年で抜けてしまうこともあり、最悪の場合はインプラント治療が不可能になることもあります。

トラブルがあったときに落ち着いて対処できるようインプラントの構造を理解し、どの部分が抜けたのかを確認しましょう。基本的にインプラントは以下の3つの構造でできています。

<インプラントの構造>

上部構造 セラミックなどでできた、差し歯や入れ歯でいう人工歯部分を指す
アバットメント 上部構造とインプラント体を連結するパーツである
インプラント体 顎骨に埋め込まれる人工歯根を指し、チタンなどでできている

インプラントが抜ける原因と対処法

木目のテーブルの上に歯ブラシやフロスが置かれている

インプラントが抜ける原因はさまざまですが、どれも対処法としては事前に予防することや定期的なメンテナンスを行うことです。それでも起きてしまったトラブルに関しては、すぐに歯科医院に相談しましょう。

インプラントが抜ける原因は、以下のとおりです。

  • 不適切なセルフケア
  • メンテナンスを怠った
  • 歯ぎしりや食いしばり
  • 噛み合わせの不具合
  • 喫煙
  • インプラントの劣化
  • 歯科医院側の問題

それぞれを解説していきます。

不適切なセルフケア

治療が完了したあとはさまざまなトラブルを回避するため、自分でインプラントをしっかりケアすることが非常に重要です。ケアを怠ってしまったり、正しいケアが行えていないと、インプラントが抜ける原因であるインプラント周囲炎を発症します。

インプラント周囲炎とはインプラントの周囲にある歯茎や骨が細菌感染を起こし、さまざまな症状を引き起こす疾患です。

インプラント周囲炎の症状には、以下のようなものがあります。

  • 歯茎が腫れて赤くなる
  • 出血する
  • 排膿する
  • 痛みがある
  • 歯茎が痩せる
  • インプラントがぐらつく

インプラント周囲炎の原因は口腔内細菌です。また、歯周病の原因菌がインプラント周囲炎を助長させることがわかっています。これらの細菌は、歯磨きが不十分なことで歯に付着するプラークに含まれていることから、正しい歯磨きを行い、細菌の増殖を防ぎ、感染を予防する必要があります。

インプラントが抜ける原因となるインプラント周囲炎を防ぐため、以下のことに注意してセルフケアを行いましょう。

  • 力が入らないようペンを持つように歯ブラシを持つ
  • 細かく動かして磨く
  • デンタルフロス・歯間ブラシ・タフトブラシを併用する
  • 食後に歯を磨く

上記のセルフケアは、インプラント周囲炎だけではなく、歯周病予防にもつながります。

メンテナンスを怠った

インプラントと治療が完了したあとは、定期的にメンテナンスが必要です。

メンテナンスでは主に行われることは以下のとおりです。

  • インプラントや歯茎などの確認・検査
  • ブラッシング指導
  • 歯石の除去
  • クリーニング

歯科医院での定期的なメンテナンスを怠ると、インプラントが抜けるといったトラブルにつながりやすくなります。インプラントを長持ちさせるためには、トラブルを未然に防ぎ、口腔内を清潔に保つことが大切です。

歯ぎしりや食いしばり

歯ぎしりや食いしばりは、インプラントに過度な力をかけ、大きなダメージを与えます。

天然歯の歯根には歯根膜と呼ばれる薄い膜があり、噛んだ圧力を吸収・分散させる役割を果たしています。インプラントには歯根膜がなく、歯ぎしりや食いしばりによる強い圧力がダイレクトに歯茎や骨を刺激します。その結果、インプラント周囲炎を引き起こし、インプラントが抜ける原因にもつながります。

本来であれば、インプラント治療を始める前に歯ぎしりや食いしばりを緩和する治療を行うのが理想的です。

ただし、インプラント治療後に発症した場合は、マウスピースをするなどして対処します。

噛み合わせの不具合

インプラントの噛み合わせが悪いと、過度な負担がかかった状態が続きます。結果的に、インプラントの動揺や歯茎の炎症を引き起こすため、噛み合わせに違和感がある場合は歯科医師に伝えて調整してもらいましょう。

また、治療直後は咬み合わせに問題がなくても、生活していくうちに変化が現れることも珍しくありません。噛み合わせを確認するためにも、定期的なメンテナンスを受けましょう。

喫煙

喫煙者のインプラント脱落率は、非喫煙者と比較しておよそ2倍と言われています。喫煙がインプラント周囲炎を引き起こす原因となるためです。

タバコに含まれるニコチンは免疫力を低下させます。また、口腔内を乾燥させ、唾液の持つ抗菌作用・殺菌作用・自浄作用を弱めます。これらのことが細菌感染のリスクを高め、インプラントが抜ける原因ともなるインプラント周囲炎を引き起こすのです。

ニコチンは血管を収縮させ、血流を悪くする作用があります。それによって埋め込んだインプラントと顎骨との結合を阻害し、トラブルを引き起こすリスクを高めます。

喫煙は歯周病を悪化させる原因にもなるため、インプラントだけではなく、ほかの歯にも悪影響を与えます。インプラント治療を始める前に禁煙するのが望ましいでしょう。

インプラントの劣化

接着したセメントの劣化で上部構造が外れることがあります。またスクリュー式のアバットメントの場合は、ネジのゆるみや締め付け不足で抜けることも考えられます。

上部構造やアバットメントに問題がなければ、装着のし直しやネジの締め直しで対処できる可能性が高いです。

歯科医院側の問題

インプラントが抜けるなどのトラブルは、不適切な手術によっても起こります。手術前の検査・診断ミスで、顎骨が少なかったりインプラント周囲炎の要因があったりする患者に手術をすると、骨とインプラントの結合が悪くなり、トラブルが起こるリスクは高まります。

また、質の悪いインプラントを使用することによるトラブルもあちを絶ちません。対処法としては、インプラント治療の経験が豊富で実績のある歯科医師か、感染対策や事前検査をしっかり行なっている歯科医院かを確認することが大切です。

インプラントが抜けてしまった際の注意点

青い背景の前に、びっくりマークが描かれた黄色の逆三角が置かれている

万が一インプラントが抜けたときは、自己判断で対処せずに必ず歯科医院に連絡しましょう。

歯科医院での治療がスムーズに進むよう、以下のことに注意してください。

  • どこの部分が抜けたかを確認する
  • 抜けたまま放置しない
  • 抜けたインプラントを戻さない
  • 瞬間接着剤などで固定しない

それぞれを解説していきます。

どこの部分が抜けたかを確認する

前述のとおり、インプラントは3つのパーツで構成されています。

抜けた部分がどこなのかによって原因と対処法が異なります。どの部分が抜けたのか・残った部分は問題ないのか、鏡を使って見るなどして確認しましょう。

抜けたまま放置しない

歯科医院に行くのが面倒といった理由で、抜けたまま放置しないようにしましょう。

審美性や機能性が低下するだけではなく、インプラントが抜けたことでできた「すき間」から細菌が入り、炎症を起こすことがあります。再治療が不可能になる場合も考えられるため注意してください。

抜けたインプラントを戻さない

無理に戻そうとするのは避けてください。細菌感染したり、抜けたパーツを誤飲したりする恐れがあります。

瞬間接着剤などで固定しない

瞬間接着剤などを使って固定するのは避けましょう。

自分で接着すると噛み合わせに不具合が生じ、インプラントや周りの歯に負担をかける可能性があります。

抜けたインプラントの保管方法

包み込むように両手を置いている

抜けてしまったインプラントは、歯科医院を受診するまでの間、清潔な容器に入れて保管しましょう。

ティッシュなどに包んで保管する方もいますが、誤って捨ててしまったり、破損したりする恐れがあるため避けてください。パーツを紛失したり破損したりすると作り直しが必要になります。再度、治療する期間や費用がかかることになるため、抜けたインプラントは大切に保管しましょう。

インプラントが抜けて歯科医院を受診する際に伝えること

歯科の椅子に座って話を聞く患者

歯科医院を受診した際に、以下のことを伝えると治療がスムーズに進みます。

  • 抜けた日時
  • 抜けた際の状況
  • 最近のインプラントの状態
  • 痛みなどの現在の状態

多くの情報を伝えることで、抜けた原因の追及や処置の選択がしやすくなります。

まとめ

黄色い背景の前にコップに入った歯ブラシと歯磨き粉が置かれている

インプラントを長期間快適に使うためにも、抜ける原因になることは避け、定期的なメンテナンスを受けましょう。

インプラントでお悩みの方や不明点がございましたら、神奈川県綾瀬市にある武内歯科医院にお気軽にご相談ください!

インプラント周囲炎とは?歯周病との違いや症状、治療法について詳しく解説!

皆さん、こんにちは。綾瀬市にある武内歯科医院です。

口元に指を当て、険しい表情をしている男性

インプラント周囲炎とは、インプラントの歯周病です。

しかし、歯周病と違ってインプラント周囲炎は進行が早く、予後が悪くなることが多いため、予防が非常に重要です。

この記事では、歯周病との違いを踏まえ、原因や治療法について詳しく解説します。

インプラント周囲炎とは?

指で口を広げ、奥歯のインプラント部分を見せている

インプラント周囲炎とは、歯周病菌によりインプラントの周辺組織が炎症を起こしている状態のことをいいます。

インプラントの歯は天然歯に比べて抵抗力が弱いため、一度細菌感染を起こすと急速に骨吸収が進行します。自覚症状が出にくいため、気付いたときには重症化していることがほとんどです。

インプラントはチタンやセラミックなどでできているため、虫歯にはなりません。

しかし、インプラントの周囲にある歯肉や骨が細菌感染を起こすと、歯周病と同じように炎症が起きて顎の骨が溶かされます。日本歯周病学会からは、インプラント埋入後3年以上で9.7%の人がインプラント周囲炎を発症したという研究報告が出されています。

参照:歯周病患者における口腔インプラント治療指針およびエビデンス 2018

インプラント周囲炎と歯周病の違い

片手に歯の治療器具を持って、斜め上を見上げている歯科助手

インプラント周囲炎と歯周病の症状は同じですが、進行速度や重症化するリスクが違います。

天然歯には、歯と歯槽骨の間に「歯根膜」という膜が存在します。歯肉や顎の骨に血液を供給し、栄養補給の役割を担っています。一方、インプラントには歯根膜がないため、周辺組織の免疫力が低下し、感染しやすい状態になっています。また、天然歯は、歯根膜があることで歯肉と骨が密着している状態になり、細菌の侵入を防いでいます。歯根膜がないインプラントは、歯と歯肉の間に隙間ができやすく、細菌が入りやすい状況になっています。インプラントは構造上、天然歯よりも感染しやすく重症化しやすい特徴があり、インプラント周囲炎の進行速度は、歯周病の3倍ともいわれています。

さらに、歯周病とインプラント周囲炎では歯周病菌を構成する細菌の種類や比率が多少異なることがわかっており、インプラント周囲炎に歯周病の治療を行っても、あまり効果がありません。これがインプラント周囲炎は歯周病よりも難治性が高いといわれている理由です。

インプラント周囲炎の症状

前歯の歯茎を見せている女性

<進行度別 インプラント周囲炎の症状>

進行度 症状
 

軽度

 

歯茎が腫れ、押すと出血する。
 

中等度

 

歯茎から膿が出て、口臭が発生する。

 

重度

 

歯茎が下がり、インプラントが露出したり、グラグラして不安定になったりする。痛みが出ることもある。

 

インプラント周囲炎は、初期の段階では痛みはありません。自覚症状が乏しいのが歯周病およびインプラント周囲炎の特徴です。

軽度では、歯周ポケットにプラーク(歯垢)が溜まり炎症が起きている状態で、骨の破壊はまだ起きていません。

中等度は、歯槽骨まで炎症が広がって膿が出てきます。

重度になると、歯槽骨の吸収に伴って骨に炎症が起きているため、痛みを感じる場合があります。歯茎が痩せてしまい、インプラントが露出することもあり、最終的にはグラグラして抜け落ちることがあります。重度のインプラント周囲炎になると、ほとんどの場合インプラントを除去しなければなりません。

インプラント周囲炎の原因

右手に歯の模型、左手に治療器具を持っている歯科医師

インプラント周囲炎の原因は、歯磨きやメンテナンスを怠ることに加え、生活習慣や持病なども関係しています。

ケアを怠る

「歯磨きを毎日行わない」「ブラッシングが雑」などが原因でインプラント周辺に汚れが溜まると、細菌が増殖して、インプラント周囲炎を発症します。歯科医院への通院も怠ると、発症リスクは高くなります。

プラークは歯磨きで落とせますが、プラークが固まった歯石は歯科医院のクリーニングでないと落とせません。歯石は歯周病の原因になるため、定期的に除去する必要があります。

喫煙習慣がある

タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させる作用があるため、血流が悪くなります。血流が悪くなると、酸素や栄養素が行き届きにくくなり抵抗力が弱まり、インプラント周囲炎を発症するリスクが高くなります。

さらに、傷を治す細胞の働きも阻害してしまうので、炎症が起きた場合は治りにくくなるという特徴があります。

糖尿病や貧血がある

糖尿病は血糖値が高くなる病気ですが、血糖値が高いと細菌に対する抵抗力が弱くなります。タバコと同様、傷が治りにくい性質もあるため、病気になった際は治りが遅くなる傾向があります。血液は、栄養や病気を治す白血球を全身に運んでくれる役割がありますが、血液の量が不足する貧血の場合、免疫力が低下して感染しやすい状態になります。

上記のような免疫力を低下させる疾患をもっている方は、インプラント周囲炎になりやすいため、注意が必要です。

歯ぎしりや食いしばりの癖がある

歯ぎしりや食いしばりは無意識に起こっていることが多いですが、歯や顎の骨に非常に大きな負担がかかっています。負荷は体重の2〜3倍ともいわれています。

歯周組織が損傷すると炎症が起きやすくなり、インプラント周囲炎を発症することがあります。

歯周病が完治していない状態でインプラントを治療を受けた

インプラント治療を受けるにあたって、歯周病がある場合は事前に完治させなければなりません。インプラントは、細菌に感染すると複雑な治療が必要になるため、埋め込む前にさまざまなリスクを取り除いてから治療を開始します。

インプラント周囲炎を放置してしまうとどうなる?

歯のレントゲン写真を持っている

インプラント周囲炎を発症すると骨が溶けていくため、最終的にインプラントが抜け落ちます。歯周病菌がインプラント周囲にとどまらず、ほかの歯にも感染を広げていくと、多くの歯が歯周病を発症することになります。インプラントがグラグラして不安定になっている場合は、噛み合わせにも影響が出るでしょう。噛み合わせが悪いと一部の歯に負担が集中するため、歯が欠けたり割れたりする場合があります。

インプラント周囲の組織が破壊されてしまうと、完治が難しく、処置やメンテナンスを徹底的に行ったとしても維持できる確率は60%程度しかありません。インプラント行なっている場合は、感染を防ぐことが非常に重要です。

日本歯科医学会厚生労働省委託事業によると、インプラントの生存率は埋入後10〜15年で上顎が約90%、下顎が約94%との報告が出されています。日頃から適切に対策ができていれば、長期にわたってインプラントを維持することができるでしょう。

参照:厚生労働省委託事業「歯科保健医療情報収集等事業」歯科インプラント治療のための Q&A

インプラント周囲炎の治療法

歯科医院で治療を受けている女性

インプラント周囲炎の治療法は、歯周ポケットに薬剤を注入または内服する「非外科的治療」と、歯肉を切開して手術を行う「外科的治療」の2種類があります。

それぞれ解説していきます。

非外科的治療(骨の吸収が軽度の場合)

  1. 歯周ポケットの掃除
  2. 薬剤またはレーザーで細菌を死滅
  3. 抗生物質で炎症を抑制
  4. 歯磨きや生活指導

PMTC(プロフェッショナル・メディカル・ティース・クリーニング)で、歯周ポケットに溜まったプラークや歯石を取り除きます。インプラント周囲炎が軽度の場合は、治療はここまでです。

細菌の感染がさらに広がっている場合は、歯周ポケットに薬剤を入れ、殺菌作用のある薬剤を使ってうがいすることで、口内全体の細菌を死滅させます。薬剤だけでなく、PDT(光線力学療法)と呼ばれるレーザーを用いて殺菌する方法もあります。

さらに、炎症を抑えるために抗生物質を歯周ポケットに注入し、帰宅後も一定期間薬を内服する必要があります。

最後に、適切な歯磨きの方法や、歯ぎしりや全身疾患を持ち合わせている方には生活指導も行います。

外科的治療(骨の吸収が進んでいる場合)

  1. 歯肉切開
  2. 骨の再生

骨の吸収が進んでいる場合は、インプラントに直接アプローチする必要があるため、歯肉を切開します。薬剤や専用の機器を用いてインプラントの表面を掃除し、殺菌します。

骨の吸収が進行して骨の再生が必要な場合は、骨移植やメンブレンで覆って骨の再生を図ります。メンブレンは、骨の再生を促す人工膜です。

上記の治療法でインプラント周囲炎が改善されない場合は、インプラントを除去しなければなりません。

インプラント周囲炎を起こさないために

タオルと歯ブラシ2本、歯磨き粉、コップが置かれている

インプラント周囲炎を起こさないためには、口内を清潔に保つことです。また、感染しにくい体づくりも重要です。

セルフケアを徹底する

毎日丁寧にブラッシングをしましょう。歯ブラシは毛先が細いものを使用すると歯周ポケットに届きやすいです。また、歯の表面だけでなく、歯周ポケットの中の汚れを掻きだすように磨きましょう。

磨き方のポイントは、歯茎に対して歯ブラシを45度に当て、小刻みにブラッシングします。歯間ブラシやフロスは、歯ブラシだけでは落としにくい歯と歯の間の汚れも落とすことができるのでおすすめです。

歯科医院でブラッシング指導も行っているので、通院の際に聞いてみるのもよいでしょう。

歯科医院でメンテナンス

インプラント治療は埋めて終わりではありません。天然歯よりも細菌感染しやすいことから、治療後は定期的に歯科医院でのメンテナンスが必要です。セルフケアだけでは落としきれない汚れもあるため、3か月に1回を目安にクリーニングを受けるようにしましょう。

メンテナンスでは、クリーニングだけでなく、レントゲンで顎の骨の状態も確認してくれます。インプラントのネジの固定が緩んでいないか、噛み合わせによってインプラントに過剰な負荷がかかっていないかなども判断してくれるので、安心できるでしょう。

インプラントの構造上、細菌が奥深くまで入り込んでしまうと完全に除去することは難しいため、天然歯よりも予後が悪くなることが多いです。インプラント周囲炎の予防に加え、早期発見にもつながるため、定期的に歯科医院でメンテナンスを受けるようにしましょう。通院が続けられるように、通いやすい歯科医院を選ぶことも大切です。

禁煙

喫煙は、タバコに含まれる成分によってインプラント周囲炎を発症するリスクが上がります。禁煙は全身の健康にもつながるため、まずは喫煙本数を少なくし、必要であれば禁煙外来を受診するとよいでしょう。

生活習慣の改善

糖尿病や貧血などの持病がある方は、感染しやすいうえに、治りも遅くなります。また、食生活が乱れていたり疲れが溜まっていと、免疫力が下がり、細菌への抵抗力が弱くなります。栄養バランスのとれた食事や十分な睡眠時間を確保しましょう。免疫力を上げるには、ストレスを溜めないことが非常に重要です。

さらに、食事の際は噛む回数を増やしましょう。唾液は噛むことによって分泌が促進されます。唾液には、口内の汚れを洗い流し、殺菌する効果があります。インプラント周囲炎を予防するには「ふだんよりも多めに噛むこと」を意識しましょう。

まとめ

歯の模型の入れ物に入っている歯の治療器具

インプラント周囲炎は自覚症状が乏しいため、進行に気付きにくいのが特徴です。進行速度が早く、予後が悪くなることが多いため、手遅れにならないよう早期発見・早期治療が大切であるといえます。インプラントの寿命を延ばすためには、ふだんから丁寧に歯を磨き、定期的に歯科医院を受診しましょう。

インプラントでお悩みの方や不明点がございましたら、神奈川県綾瀬市にある武内歯科医院にお気軽にご相談ください!