皆さん、こんにちは。綾瀬市にある武内歯科医院です。
インプラント治療は事前に丁寧に検査を行い、治療後の自己管理を徹底すれば安全に受けられます。インプラントは耐久性が高く、メンテナンスを怠らなければ非常に長持ちする人工歯です。
しかし、治療中または治療後にリスクが伴うのも事実です。
今回は、インプラント治療の安全性とリスクについて解説します。
インプラントとは
インプラントとは失った歯を補う方法の一つで、人工の歯根を顎の骨に埋め込み、その上に人工歯を取り付ける治療法です。
通常、インプラント本体は生体親和性の高いチタンやジルコニウムで作られるため、アレルギーや拒絶反応が少なく、耐久性も優れているのです。
インプラント治療は大まかに3段階にわけられます。
まず、失った歯の部分の顎の骨にインプラント本体を埋入する手術を行います。次に、埋入したインプラントが顎の骨と結合するのを待つ期間が必要です。結合を待つ期間は、インプラントが長期間機能するうえで非常に重要です。最後に、インプラントの上部にアバットメントとよばれる部品を取り付け、その上に人工歯を固定します。
インプラントは自然な見た目と機能を取り戻すことができるのはもちろん、隣接する健康な歯を削る必要がありません。また、顎の骨の萎縮を防ぐ効果もあります。
しかし、インプラント治療には一定の条件があり、全ての患者さまに適応するわけではありません。手術が必要なため全身状態が良好でなければならず、適切な口腔ケアの習慣も求められます。また、治療費用が高額なことや治療期間が長いことがデメリットといえるでしょう。
インプラント治療は安全なのか?
インプラント治療は、治療の条件を満たし、全身状態・口腔環境が良好であれば、安全性が確保できるといえるでしょう。インプラントは耐久性の高さと見た目の美しさから、入れ歯やブリッジの問題点を解決する画期的な治療法として広く行われています。
しかし、自身の健康状態によっては、ほかの治療を選択したほうがよい場合もあるでしょう。特に、インプラントが適していないケースとして、顎の骨が薄く少ない方、未成年の方、金属アレルギーを持つ方、全身疾患や持病を持つ方、妊娠している方が挙げられます。
インプラント治療では顎の骨に人工歯根を埋め込むため、十分な骨量が必要です。また、成長途中の未成年者は骨の成長が終わってから治療することが推奨されます。
インプラントには生体親和性が高いチタンが使用されますが、金属アレルギーがある方は受けられません。また、治療後は感染症にかかりやすくなるため、体調が良好でなければ手術は受けられません。
虫歯や歯周病がある方は、まずは完治を目指し、口腔環境を整えてからインプラント治療を受ける必要があります。
インプラント治療のリスクとは?
インプラント治療は外科手術であるため、高度な技術が必要です。事前のCT検査で、手術部位と神経などの正確な位置関係を把握できない場合、神経を損傷する、インプラントが脱落するなどのリスクがあります。
インプラント治療のリスクは、以下のとおりです。
神経を損傷する
人工歯根を顎の骨に埋め込む際に、顎の神経を損傷するリスクがあります。特に、下顎の骨には下顎神経が通っており、手術中に傷つけられると下顎や唇にしびれや麻痺などが出る可能性があるのです。
神経損傷は、慎重な手術計画と技術によって予防することが可能ですが、完全にリスクをゼロにすることは難しいとされています。万が一大きく神経を損傷した場合、リハビリテーションや薬物療法が必要となることもあるでしょう。軽度であれば、時間の経過とともに自然に回復するケースもあります。
神経損傷のリスクを避けるためには、治療前の検査が非常に重要です。特に歯科用CTでの検査が、治療の精度に大きく影響するでしょう。
インプラントが上顎洞に落ちる
上顎の奥歯にインプラント治療を行う場合、上顎洞とよばれる空洞にインプラントが落ちるおそれがあります。
上顎洞は鼻腔の一部で、ふだんは鼻からの空気を温める役割を担っています。手術前の丁寧な検査で、インプラントが上顎洞に落ちることを防げるでしょう。
具体的には、CTを用いて、上顎洞の位置や形状、骨の厚みなどを詳細に把握することが重要です。インプラントを適切な位置に・深さで設置することが可能となり、上顎洞への落下リスクを大幅に減らすことができるのです。
骨が火傷する
インプラント治療では、人工歯根を顎の骨に固定するために、ドリルを使って骨を削ります。骨を削る際、ドリルによる摩擦熱で骨が過度に熱され、骨細胞が熱傷を受けて死滅することがあります。
作業中に水を注入することで、火傷を防ぐことができるでしょう。注水は、ドリルと骨が接触する部分に直接行います。ドリルと骨の間の熱を適切に冷却し、骨が過度に熱を持つことを防ぎます。
注水が不足すると火傷するため、医師の高度なスキルが求められるでしょう。
インプラントと骨が結合しない
患者さまの顎の骨の厚みが不十分な場合、インプラントと骨が適切に結合しないことがあります。治療前の準備としてCTスキャンを用いて、顎の骨の厚みや構造を詳細に調べることが重要です。
骨量が不足する原因は、歯周病や喫煙習慣の影響が多いです。
歯周病は進行すると顎の骨が溶けるため、骨量が不足しやすくインプラントと骨の結合が困難になる可能性があります。また、タバコに含まれるニコチンは血流を悪化させ、骨の結合力を弱める原因になるでしょう。
特に、インプラント治療後の骨再生には血流が重要であり、ニコチンによる血流の低下は骨の再生力を大幅に抑制します。インプラント体と顎の骨の結合が十分に行われず、インプラントが安定しない可能性が高まるでしょう。
細菌に感染する
インプラント治療後は、細菌感染に注意が必要です。術後は、特に刺激の強い食べ物やアルコールは避けなければなりません。
アルコールなどは傷口に刺激を与え、炎症や感染を引き起こす可能性があります。また、縫合糸には汚れが溜まりやすく、溜まった汚れに細菌が繁殖することもあるでしょう。
汚れを落とすことは重要ですが、過度な力をかけて磨いてはいけません。強い力でブラッシングを行うと、傷口が広がる可能性があります。傷口が広がると細菌が体内に侵入しやすくなり、感染症のリスクが高まります。
感染のリスクを抑えるには、傷口にできるだけ触れず、口内を清潔に保つことが重要です。
インプラントが破損・脱落する
インプラントには天然の歯に近い感覚で長期的に使用できるメリットがありますが、破損・脱落するリスクもあります。特に、顎の骨が薄い方や歯茎が細菌感染によって弱くなっている方は、インプラントが破損・脱落するリスクが高まります。
インプラント治療後は適切な口腔ケアが重要で、毎日の歯磨きや定期的な歯科医院でのメンテナンスが必須といえるでしょう。治療後はインプラント周囲炎のリスクもあるため、口腔内を清潔に保つことが重要です。
金属アレルギーを発症する
一般的に使用されるインプラントの材料はチタン合金で、生体親和性が高く、金属アレルギーのリスクが比較的低いとされています。
しかし、すべての患者さまにアレルギー反応が出ないわけではありません。チタン合金にはチタン以外の金属も含まれているため、チタン以外の金属にアレルギー反応を示すこともあります。
金属アレルギー発症のリスクを抑えるためには、インプラント治療を開始する前に金属アレルギーのパッチテストを受けることが重要です。インプラント治療後に金属アレルギーを発症した場合、再手術を行ってインプラント体を取り除く必要があります。
糖尿病が悪化する
インプラント治療で糖尿病が悪化する理由は、治療のストレスや食事制限による血糖値の低下です。
外科手術は侵襲が大きいためストレスを感じる方が多く、血糖値が上昇します。上昇した血糖値は、反動で急激に低下することがあるのです。また、インプラント治療後の食事制限も血糖値を下げる要因となります。
糖尿病の患者さまがインプラント治療を受ける際は、必ず主治医と事前に相談してください。
インプラント周囲炎を発症する
インプラント周囲炎とは、インプラントの歯周病です。インプラントとその周辺の歯茎に炎症が起きる状態のことを指します。
過度の力がかかる、細菌に感染するなどで、歯茎の炎症は骨へと進行しインプラントの支持力が低下します。最悪の場合、インプラントの抜去が必要になるでしょう。
特に、糖尿病の方はインプラント周囲炎のリスクが高いです。糖尿病によって身体の免疫機能が低下し、感染症に対する抵抗力が落ちるためです。また、手術を行うインプラント治療では、傷口から細菌が侵入しやすく、感染症につながる可能性があります。そのため、糖尿病の方は特に感染予防に注意しなければなりません。
喫煙習慣がある方もインプラント周囲炎のリスクが高まります。喫煙により血流が悪化し、唾液の分泌量が低下すると、口腔内の自浄作用が弱まり細菌が繁殖しやすくなります。そのため、インプラント周囲炎のリスクが上がるのです。
全身状態が悪化する
心臓疾患、脳血管疾患、高血圧がある方は、インプラント治療によって全身状態が悪化するリスクがあります。
心筋梗塞の治療で抗凝固薬を服用している場合は、手術時の出血リスクが増加します。一時的に服薬をやめることもありますが、心筋梗塞の再発リスクを高めるため、慎重な判断が必要です。また、手術のストレスによる血圧変動は心疾患のリスクを増加させます。
脳血管疾患がある方も、抗凝固薬の影響や手術のストレスで脳梗塞のリスクが上がるでしょう。また、高血圧の方も手術のストレスによって血圧が上昇し、脳梗塞や心疾患のリスクが増加します。
安全にインプラント治療を受けるための歯科医院の選び方
インプラント治療を安全に受けるには歯科医院選びが重要です。通常の虫歯や歯周病治療と異なり、インプラント治療は高度な技術と設備が必要といえます。
歯科医院を選ぶ際に注意するべきポイントは、以下のとおりです。
治療実績があるか
歯科医院を選ぶ際は、インプラント治療の実績が豊富であるかを確認しましょう。
インプラント治療は高度な技術を必要とし、一定のリスクを伴ういます。実績の豊富さを評価する基準として、クリニックのインプラント治療の症例数をチェックしましょう。
歯科用CTがあるか
安心してインプラント治療を受けるには、歯科用CTスキャンが導入されているかも非常に重要です。
CTスキャンを行うことで、骨の厚みや神経の位置、隣接する歯の状態を正確に把握し、適切な治療計画を立てることが可能です。特に、顎の骨がインプラント治療に適しているかどうかを確認することで、治療後のトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。
衛生管理を徹底しているか
インプラント治療は麻酔を伴う手術が必要で、細菌感染リスクが高まります。治療器具は使い回されていないか、治療器具が適切に滅菌処理されているか、手術が個室で行われているかなど、確認すべきポイントが多数存在します。
どのような衛生管理を行っているかは見落とす方が多いですが、ホームページなどを確認し、適切な衛生管理が行われている歯科医院を選びましょう。
アフターケアが充実しているか
インプラント治療は埋め込み後の経過観察が重要で、噛み合わせの問題、炎症の有無や度合いなどを確認する必要があります。そのため、治療後の通院などのアフターケアに対応しているクリニックを選びましょう。
インプラント治療は保証がついていることが多いです。保証年数以内にインプラントに問題が生じた場合、無償または一部有償で再治療が受けられます。契約前に保証内容も確認するとよいでしょう。
まとめ
インプラント治療は事前に丁寧な検査を行い、起こりうるリスクをしっかり把握すれば安全に受けられる治療です。リスクを把握するためにはCTでの検査が必要不可欠といえます。CTでは、レントゲンでは把握できない詳細な情報を確認できるでしょう。
実際に外科手術を行うのは医師であるため、医師の技術力も重要です。スキルを直接確認することが難しいため、判断基準として治療実績を確認しましょう。対応してきた症例数が多いほど、トラブルにも慣れていると予測でき、より安全に手術を受けられるでしょう。
インプラントでお悩みの方や不明点がございましたら、神奈川県綾瀬市にある武内歯科医院にお気軽にご相談ください!