皆さん、こんにちは。綾瀬市にある武内歯科医院です。
「歯ぎしり癖があると、インプラント治療を受けても失敗してしまうのではないか」と、不安に思う方も多いでしょう。インプラントは、歯ぎしりによって破損や炎症を起こすリスクがあります。
しかし、負担を軽減する方法や歯ぎしりを改善する方法があります。
今回は、インプラント治療をするうえで、歯ぎしりによって失敗しないための対策や歯ぎしりの改善方法について解説します。
歯ぎしりとは
歯ぎしりとは、無意識のうちに歯を強くこすり合わせることです。
歯ぎしりには以下の2種類があります。
- グライディング:上下の歯をギリギリと横にすり合わせること
- タッピング:上下の歯をカチカチと縦に噛み合わせること
歯ぎしりの原因は、ストレスや不安、不良な睡眠姿勢、歯並びや噛み合わせの異常などが挙げられます。気にしない方も多いかもしれませんが、歯ぎしりは歯や顎関節、筋肉に損傷を与え、頭痛、顎の痛み、歯の消耗、知覚過敏、睡眠障害などを引き起こすことがあります。
歯ぎしりは睡眠中に起こることが多いですが、昼間にも無意識のうちに起こることがあり、自分では気づきにくいのが特徴的です。他人に指摘してもらうか、歯科医院の受診の際に歯のすり減りや顎関節の異常で発覚することが多いでしょう。
歯ぎしりを予防するには、ナイトガードの使用やストレスの軽減、適切な睡眠姿勢を意識しましょう。
歯ぎしりが口腔内に与える悪影響
歯ぎしりは、口腔内にさまざまな悪影響を与える可能性があります。
以下で、歯ぎしりによって引き起こされるリスクをご紹介します。
歯の消耗
歯は、ダイヤモンドのような硬さをもちます。強力な力でこすり合わせると、歯の表面が削られていきます。場合によっては、歯が欠けたり割れたりすることもあるでしょう。
知覚過敏
歯ぎしりによって歯が削れてしまうと、神経が露出する場合があります。冷たいものや熱いものがしみやすくなり、痛みが生じる可能性もあります。
人工歯の破損
歯ぎしりは、天然の歯だけでなく、詰め物や被せ物も削っていきます。歯ぎしり癖がある場合、詰め物や被せ物が欠けたり、取れてしまったりする場合があるでしょう。
インプラントは耐久性に優れていますが、強い衝撃には弱いため、歯ぎしりで大きな力が加わると破損する可能性があります。
歯茎の炎症
歯ぎしりによって歯を強くこすり合わせることで、歯茎にも負担がかかり、炎症を起こすことがあります。歯茎が徐々に下がっていき、歯周病の発症や悪化へとつながります。
顎関節症
歯ぎしりが続くと顎関節に負担がかかり、顎関節症を引き起こすことがあります。顎の痛みや口の開けにくさ、口の開閉時に顎関節から音がするなどの症状がみられます。
歯並びや噛み合わせの変化
歯ぎしりによって、歯並びが変わってしまうこともあります。大きな力が持続的に歯にかかることで、歯が動いてしまうことがあるからです。結果的に、歯並びが悪くなったり、噛み合わせが悪くなったりします。
頭痛や肩こり
歯ぎしりは、顔周りの筋肉を緊張させます。筋肉の緊張状態が続くと、顎だけでなく頭や肩へと影響し、頭痛や肩こりが生じることがあります。
顎の骨の異常な発達
歯ぎしりによって大きな力が顎の骨にかかると、圧力に耐えようと顎の骨が発達していきます。舌を上げたときに、下顎にボコボコとした突起がみられる場合は「骨隆起」といって、顎の骨が異常に発達していることを示しています。
歯ぎしりによってインプラント治療が失敗するケース
歯ぎしりは、インプラント治療においても問題を引き起こす可能性があります。
以下で、歯ぎしりによってインプラント治療が失敗するケースについて解説します。
インプラントの破損
歯ぎしりによって強い力がかかることで、インプラントが破損することがあります。
インプラント体と義歯をつなげているネジの部分が緩んだり、義歯がすり減って形が変形したりします。場合によっては、噛み合わせの異常を引き起こす場合もあるでしょう。
インプラントが破損すると、再治療が必要です。
インプラント周囲炎の発症
インプラント周囲炎とは、インプラントの歯周病です。
歯ぎしりによって歯茎が下がりやすくなるため、歯周病の原因となる細菌が歯茎に侵入しやすくなります。また、歯周組織が歯ぎしりで損傷すると炎症を起こしやすくなるので、インプラント周囲炎を発症するリスクも高まります。
インプラント周囲炎は、進行が早いうえに予後が悪いことが多いため、最悪の場合インプラントを抜歯しなければならないこともあるでしょう。
インプラントは歯ぎしりの影響を受けやすい
インプラントは、その構造上、天然の歯よりも歯ぎしりの影響を受けやすいのが特徴的です。これには、歯根膜が関係しています。
歯根膜とは、歯と歯茎の間にある膜のことです。血液や栄養を補給する役割のほか、噛みしめ時の顎の骨にかかる負担を軽減する働きがあります。
天然の歯の場合、歯ぎしりによってかかる強力な力は、歯根膜によって分散されます。
しかし、インプラントを埋め込んだ歯には歯根膜がありません。そのため、歯ぎしりによる負荷がそのまま顎の骨にかかります。
また、歯根膜は歯周病の進行を抑える作用もあります。歯根膜は細菌の侵入を防いでくれますが、インプラントには歯根膜がないため、歯と歯茎の間に細菌が入り込むと一気に進行します。これが、インプラント周囲炎を発症すると進行が早く、予後が悪くなるといわれる理由の一つです。
歯ぎしり癖がある方がインプラント治療を受けるときは
歯ぎしり癖がある方がインプラント治療を受ける場合、以下のような対策が必要です。
ナイトガードの使用
歯ぎしり癖がある方には、ナイトガードの使用が推奨されています。
ナイトガードは、歯を守るための装置で、歯ぎしりによるダメージを防止できます。歯ぎしりは、インプラントの破損や脱落、インプラント周囲炎を引き起こすリスクが高いので、日頃からナイトガードを装着して、負荷を軽減することが重要です。ナイトガードの使用は、インプラント治療の失敗を回避するための有効な手段といえるでしょう。
生活習慣の改善
歯ぎしり癖の原因の一つとして、生活習慣が挙げられます。歯ぎしりを誘発させるような姿勢をとっていたり、喫煙や飲酒によって睡眠が浅くなっていたりする場合は注意が必要です。
ストレス解消や適度な運動は、身体をリラックスした状態へと導くので、歯ぎしりを抑制できる場合があります。
歯科医師との相談
インプラント治療を受ける前に、歯科医師に歯ぎしり癖があることを伝え、相談することも重要です。歯ぎしり癖に対する対策やインプラント治療について、アドバイスを受けられるでしょう。
また、インプラント治療後の定期的な通院も忘れないようにしましょう。定期的な検診により、インプラント周囲炎やインプラントの破損などを早期に発見し、適切な治療を行うことができます。
歯ぎしりの改善方法
歯ぎしりは根本的な治療がなく、ナイトガードの使用やストレスの軽減など対症療法がほとんどです。
最後に、歯ぎしりを改善する方法について解説します。
ナイトガードの使用
前述したように、ナイトガードは睡眠中に装着するマウスピースで、歯ぎしりに有効です。ナイトガードは上顎のみに装着し、歯と歯が直接接触しないようにクッションの役割を果たします。ナイトガードが間に入ることで、歯や顎関節にかかる負担を軽減できるでしょう。
ナイトガードは、プラスチック製の「ハードタイプ」とシリコン製の「ソフトタイプ」があり、歯科医院によって取り扱っているタイプが異なります。
重度の歯ぎしりの場合は、ナイトガードの消耗も早くなるでしょう。ナイトガードがすり減ったら、再作成が必要です。ナイトガードの作成は健康保険が適用されるので、費用は3,000〜5,000円ほどです。
ナイトガードの使用を検討されている方は、歯科医院に相談してみましょう。
ストレスの軽減
ストレスが歯ぎしりの原因になる場合があるので、日頃からストレスを溜めないようにしましょう。眠りが浅いと筋肉が緩み、歯ぎしりを引き起こしやすくなります。
特に睡眠前は、スマートフォンの使用を避けたり、ストレッチや瞑想などで睡眠の質を上げたりすると効果的です。眠りを浅くしやすい、喫煙や飲酒、カフェインの摂取はなるべく控えましょう。
矯正治療
歯並びや噛み合わせの異常から歯ぎしりが起こっていると判断された場合は、矯正治療も改善方法の一つです。
仰向けの姿勢
歯ぎしりは、睡眠時の姿勢によって軽減できる場合があります。うつ伏せ寝は、顎の骨に負担がかかりやすく、歯ぎしりを誘発させることがあります。横向きで寝る場合も、下側になったほうの顎に負担がかかりやすいです。
寝るときは、できるだけ仰向けの姿勢をとりましょう。
まとめ
歯ぎしり癖がある方も、インプラント治療を受けられる場合があります。
しかし、インプラント歯には歯根膜が存在しないので、歯ぎしりによる負荷を分散することができず、さまざまなリスクが伴います。
歯ぎしりの予防・改善には、ナイトガードの使用や生活習慣の改善、定期的な歯科検診が効果的です。インプラント治療を失敗させないために、歯ぎしりの改善を目指しましょう。
歯ぎしり癖でお悩みの方や不明点がございましたら、神奈川県綾瀬市にある武内歯科医院にお気軽にご相談ください!