タグ別アーカイブ: 上顎洞

インプラント治療後の歯磨き!最適なケアで長持ちさせる方法

皆さん、こんにちは。綾瀬市にある武内歯科医院です。

インプラントが数本転がっている

インプラント治療は、インプラント体とよばれる歯の根っこに相当するものを顎の骨に埋め込むことにより、失った歯をおぎなう治療方法です。義歯やブリッジと異なり、健康な歯を削ることなく、数十年にわたって使用できます。

しかし、インプラントを長持ちさせるには正しいケアが必要です。今回は、インプラント治療後に必要なインプラントの磨き方や歯磨き粉を選ぶポイントをまとめます。

インプラント治療後の歯磨きの重要性

笑顔で歯を磨いている女性

インプラントの人工歯は虫歯になることはありません。

しかし、インプラント周りの歯茎は、プラークや歯石が溜まり細菌が繁殖しやすくなります。

細菌が繁殖した状態が長くなると、インプラント周囲の粘膜に炎症が起こり、周囲の歯茎の腫れや出血など歯周病に似た症状が生じます。炎症が強くなると、インプラントを支えていた骨が溶け、最悪の場合インプラントが抜け落ちることがあるのです。

日本歯周病学会の調査によると、インプラント治療後に軽度の炎症がある患者は約30%、骨まで溶ける強い炎症が起こる患者は約10%といわれています。つまり、インプラント周囲の炎症は比較的起きやすいと考えられます。

インプラントを長持ちさせるためにも、日常の歯磨きをしっかり行い、インプラントの周りを清潔に保つことが重要です。

インプラント治療後の歯ブラシ・歯磨き粉の選び方

歯ブラシと歯磨き粉

では、具体的にどのような歯ブラシと歯磨き粉を使えばよいのでしょうか。以下、歯ブラシと歯磨き粉の選び方のポイントについてまとめます。

インプラントの清掃に適した歯ブラシを選ぶポイント

歯ブラシの選び方のポイントは、以下のとおりです。

毛先が細い歯ブラシを選ぶ

インプラントと歯茎の間は汚れが付着しやすい部位なので、きちんと磨くために毛先が細い歯ブラシを使用しましょう。また、インプラントと歯茎の境目を磨くには、毛先がひとつにまとまったタフトブラシも非常に有用です。

歯間ブラシやフロスを使用する

食べ物などの汚れは、歯とインプラントの間に溜まりやすい傾向にあります。そのため、歯ブラシだけではなく、歯と歯の間を磨く歯間ブラシやフロスを使用しましょう。

治療後の期間ごとに歯ブラシの硬さを変える

インプラント治療が終了した直後は、歯茎の傷が完全に治っていません。この状態で硬い歯ブラシを使用すると、歯茎が傷つく原因になります。

歯茎の傷が回復するまでは、柔らかめの歯ブラシを使用しましょう。傷口がよくなったあとは、磨きやすい硬さの歯ブラシを使用しましょう。

インプラントの清掃に適した歯磨き粉を選ぶポイント

歯磨き粉の選び方のポイントは、以下のとおりです。

フッ素入りの歯磨き粉は使用しても問題ない

インプラントにはチタンが使われています。フッ素がチタンに結合すると、チタンの表面がザラザラになり、プラークなどの汚れが付着しやすくなります。

しかし、この現象は高濃度のフッ素を使用した場合であり、薬局やコンビニなどで販売されている歯磨き粉はフッ素の濃度が低いです。そのため、インプラント清掃に市販のフッ素入りの歯磨き粉を用いても問題ありません。

大きな研磨剤が入っている歯磨き粉は使用しない

歯磨きの中には、歯の表面の汚れを取るために研磨剤(けんまざい)とよばれる成分が入っています。

研磨剤が大きいとインプラントと歯茎のすき間に入り込み、歯茎の炎症を引き起こすことがあります。そのため、舌で触って研磨剤のつぶがはっきりわかる歯磨き粉はさけましょう。

また、大きな研磨剤が入っている歯磨き粉の成分には、ケイ素や炭酸カルシウムが含まれているので、ケイ素や炭酸カルシウムを含有した歯磨き粉はさけましょう。

歯科医師に相談する

歯磨き粉には、虫歯を予防するのに特化したものや歯茎の炎症をおさえるのに特化したものなど、さまざまな種類があります。

どの歯磨き粉を購入すべきかわからない場合は、歯科医師に相談しましょう。

インプラントの正しい歯磨き方法

歯を磨いている女性

インプラントを長持ちさせるためには、正しい磨き方が重要です。以下、インプラントの正しい磨き方をまとめます。

毛先をうまく使う

効果的な歯磨きの方法は、歯ブラシの毛先を磨きたい場所にあて、毛先を細かく振動させるように磨きます。

インプラントと歯茎の境目を磨くときは、歯ブラシをインプラントの人工歯に対して45度に傾けて磨きます。45度に傾けることで、毛先がインプラントと歯茎の境目に入り綺麗に磨くことができるのです。

歯ブラシの持ち方に注意する

親指、人差し指、中指の3本の指を使い、ペンを持つように歯ブラシを持ちましょう。

この持ち方により、磨いたときに余計な力がかからないため、インプラントを傷つけることなく磨くことができます。さらに、磨くときの角度をコントロールしやすくなります。

磨く順番を決める

磨き残しを防ぐために、歯磨きのときは磨く順番を決めましょう。磨く順番は、一筆書きのように磨くのがよいでしょう。

例えば、最初に右上奥歯の表から左上奥歯の表まで磨きます。その後、左上奥歯の裏から右上奥歯の裏を磨くといったように、順番を決めることで磨き残しを最小限におさえることができます。

フロスで磨いてから歯ブラシで磨く

歯ブラシとフロスを行う場合、フロスで磨いてから歯ブラシを行いましょう。

フロスで磨いたあとに歯ブラシを行うほうが、歯の汚れを効率よく落とすことができ、虫歯予防に効果のあるフッ素が歯全体に行き渡ります。

定期的なメンテナンスでインプラントの寿命を延ばす

インプラントの模型と女性患者

インプラントを長持ちさせるためには、日常生活の歯磨きに加え、歯科医院での定期的なメンテナンスが必要です。

以下にメンテナンス内容をまとめます。

噛み合わせの確認

噛み合わせを調べる紙を噛んでもらい、インプラントの噛み合わせの状態を確認します。

インプラントの噛み合わせが悪いと、人工歯が割れる原因になるのです。インプラントが強くあたっている場合は、人工歯を削って調節します。

歯茎の確認

インプラント周りの歯茎が腫れていないか、赤くなっていないか確認します。また、インプラントと歯茎の間にある歯周ポケットとよばれるすき間の深さを確認します。

レントゲン検査

レントゲンを撮影し、インプラントを埋めた部位の骨の状態を確認します。

インプラント周りの歯茎の炎症が強いと、骨が溶けていることがあるのです。また、上の奥歯のインプラントに炎症が起こると、上顎洞とよばれる骨の中の空洞の粘膜に炎症が広がることがあります。

レントゲン写真では、上顎洞の状態も確認します。

ブラッシング指導

お口の中を観察し、磨き残しがある場合はブラッシング指導します。

ブラッシング指導では、歯ブラシのあて方やフロスの使い方などを指導します。

歯のクリーニング

歯のクリーニングでは、歯石など日常の歯磨きで取ることのできない汚れを専用の機械で除去します。また、インプラントのクリーニングでは人工歯の部分を取り外し、歯ブラシが届かないところも磨きます。

まとめ

ポイントを指さす男性医師

今回は、インプラント治療後の歯磨きについて解説しました。

インプラントの人工歯は虫歯になることはありませんが、清掃状態が悪いとインプラント周りの歯茎に炎症が起こります。炎症が悪化すると、骨が溶けインプラントが取れることがあります。

こうした事態を防ぐためにも、日頃からブラッシングをきちんと行いましょう。また、インプラントの状態の確認や細かな汚れを取るためにも、必ず定期的なメンテナンスを受けましょう。

インプラント治療後の歯磨きでお悩みの方や不明点がございましたら、神奈川県綾瀬市にある武内歯科医院にお気軽にご相談ください!

インプラントを除去しなければいけないケースとは?除去方法と費用も解説

皆さん、こんにちは。綾瀬市にある武内歯科医院です。

3本のインプラントのイメージ図

歯を失ったところに噛む機能をもたせるためには、入れ歯やブリッジ、インプラントなどの装着が主な治療方法です。その中でもインプラントは、入れ歯やブリッジと比較して装着感が少なく、見た目の審美性もよく、強く噛むことができるため、機能面で優れた治療です。

ただし、インプラント治療後に、インプラントを除去しなければならないケースがあるため、治療前にこの点も含めてインプラントするかどうか検討する必要があります。

インプラント治療とは

インプラントのイメージ図

インプラント治療とはどのような方法であるか、簡単に説明します。

インプラント治療では、インプラント体(人工歯根)を顎の骨に埋め込み、定着したらアバットメント(結合部品)と被せ物(上部構造)を装着します。インプラント体を固定するための顎の骨が足りない場合、骨を作る手術も併用して行われるでしょう。

治療期間は、インプラント体の埋入から上部構造の装着まで、数か月から1年ほどかかります。また、インプラント治療は基本的に保険適用外(自由診療)で行われ、インプラント1本を埋入する費用の相場は、20~40万円です。

インプラントを除去しなければいけない原因とは

顎に手を当て不思議そうにしている女性

高い機能性をもつインプラントですが、場合により、治療後にインプラントを除去しなければいけないケースがあります。主な要因は、インプラント周囲炎、インプラント体の破損、インプラント体の体内への迷入、神経麻痺、金属アレルギーなどが挙げられます。

以下で詳しく解説します。

インプラント周囲炎

インプラントの除去で多い要因が、インプラント周囲炎です。インプラント周囲炎とは、埋入したインプラント体の周囲組織に発症する炎症性の疾患です。

インプラント周囲炎になる原因

インプラント周囲炎が発症する主な原因は、清掃不良やメンテナンス不足による細菌感染、インプラント体に過度の負担が加わるオーバーロードなどがあげられます。

インプラント治療の際、医師は適切なインプラント体の選定、綿密な治療計画を組む必要があり、治療後のメンテナンスの重要性を患者さまにご理解いただかなければいけません。患者さまは、定期的に歯科医院で診断とメンテナンスを受け、インプラント治療部位を清潔に保つことが重要です。

インプラント周囲炎の症状

インプラント周囲炎が発症すると、インプラント体の周囲組織の炎症に加えて、インプラント体を支える顎の骨が減少する骨吸収も起こります。

骨吸収が進行すると、インプラント体の固定が弱まり、ものを噛んだ際にぐらついてしまうのです。この骨吸収は度合いにより、歯科医院でリカバリーができないことがあり、インプラントの除去となるケースがあります。

なお、骨吸収を伴わない炎症は、インプラント周囲粘膜炎と区別されており、インプラントの固定に影響は少ないとされています。インプラント部分に異常があると感じたら、早めに歯科医師に相談し、早期発見や治療を心がけましょう。

インプラント体の破損

インプラント周囲炎だけでなく、インプラント体が破損した際にもインプラントの除去が行われます。インプラント体はチタン合金などの金属で構成されており、長期間、体内で力がかかっても耐えるよう形状、表面処理などの工夫がされています。

しかし、耐久性に優れたインプラント体であっても、数十年経つと少しずつ劣化し、破損することがあります。インプラント体が破損した状態で放置すると、インプラント周囲炎や咬合不良などのリスクがあるため、インプラントを除去しなければなりません。

インプラント体の体内への迷入

上の奥歯部分の近くには、上顎洞とよばれる鼻腔(空間)が広がっており、顎の骨が薄いため、インプラント治療の際には骨を作る手術も併用されるケースがあります。そこにインプラント体を埋入すると、インプラント体が上顎洞側へ移動して、まれに鼻腔の中に入り込んでしまいます。

この状態は「インプラント体の迷入」とよばれており、迷入したインプラントは一度除去しなければいけません。迷入したら、鼻から膿が出る、違和感があるなどの症状が出るため、少しでも自覚があれば、治療を受けた歯科医院、もしくは耳鼻咽喉科へご相談いただくとよいでしょう。

神経麻痺

顔には多くの神経が走っています。

お口周りも例外ではなく、医師は治療するうえで神経を損傷しないよう気をつけなければいけません。特に、下の顎に伸びている下歯槽神経は歯根の近くにあり、親知らずの抜歯では、治療後に下唇の知覚麻痺を起こす可能性が2%ほどあるといわれています。

インプラント治療においても、下の顎にインプラント体を埋入する際は神経を傷つけないよう、細心の注意を払います。それでも神経を損傷することがあり、知覚麻痺が確認されたら、インプラントを除去して神経の治療を行わなければいけません。

金属アレルギー

金属アレルギーの方にとって、インプラント治療を行うことができるのか気になる方も多いと思いのではないでしょうか。

結果からいえば、金属アレルギーの方でもインプラント治療は可能です。インプラント体はチタンで構成されるため、金属アレルギーの原因とされる金属(ニッケル・コバルト・水銀・パラジウム・クロムなど)は含まれていないからです。

ただし、ごく稀にアレルギーを発症することがあり、チタンが原因と確認された場合は、インプラントの除去を行います。

インプラント除去の方法

患者と患者の歯を見ている歯科医師

インプラント周囲炎などの要因でインプラントを除去するためには、埋入時と同じく、局部麻酔のもと、外科手術が行われます。

骨吸収が進んでいるケースであれば、軽く引っ張って抜くことができますが、通常は専用の器具を使用して除去します。インプラント体はねじのような形状で、埋入時はトルクをかけるため、除去する際は逆回転させることで抜くことができるのです。

なお、患部の状態によっては、多少骨を削ることもあります。

インプラント除去にかかる費用

費用をあらわすイメージ図

インプラント除去の費用は、保険適用のケースと保険適用外(自由診療)のケースがあります。

以下、それぞれ解説します。

保険適用の場合

保険診療でインプラント除去するには、インプラントを埋入した歯科医院以外の施設で治療を受けなければいけません。さらに、摘出前のレントゲン画像をそろえる必要があります。

一般的なインプラント体の除去は、1本あたり保険点数460点(4,600円)です。保険診療の場合、治療費を3割負担と想定すると、1,400円ほどが自己負担額となるでしょう。

保険適用外の場合

保険適用外で治療を受ける場合は、全額自己負担です。

歯科医院によっては保証制度を設けている場合もあるので、インプラント治療を行った歯科医院にご確認ください。

インプラント除去後に再手術はできる?

両手で疑問のポーズをしている女性

インプラント除去について説明しましたが、除去後に再度インプラント手術を行うことはできるのでしょうか。

できる場合とできない場合に分けて、以下それぞれ説明します。

再手術ができる場合

再度インプラント手術ができる条件は「除去した原因を改善できていること」が挙げられます。

インプラント周囲炎であれば、細菌感染部の除去や炎症の改善、インプラント体の破損であればその除去、神経損傷であればインプラント体の除去と知覚改善などです。

再手術ができない場合

続いて、インプラント除去後に再手術ができないケースをご紹介します。

基本的に、除去した原因が改善できていなければ再手術はできません。具体的には、炎症が治まっていない、癖や生活習慣が改善されていないなどがあげられます。

炎症が治まっていない

インプラント除去後は、一日でも早く再手術して噛める状態に戻したいものです。

しかし、炎症や細菌感染源が改善していないにも関わらず、インプラントを埋入すれば、再度インプラント周囲炎を起こすリスクが高いです。再手術は治療後に計画されるでしょう。

歯ぎしりや食いしばり癖がある

インプラント埋入部の骨吸収が起こる要因は、インプラントに過度の負担があり、歯ぎしりや食いしばり癖がある方にみられます。これらの癖が改善されないうちは、再度インプラント手術を行っても、新しいインプラントに過度の負担がかかるため、癖の改善が必要です。

喫煙習慣がある

インプラント治療において、喫煙者は不利になる傾向があります。タバコを吸うことで血流が悪くなり、インプラントと顎の骨の固定を遅らせる、口内環境を悪化させて細菌感染率を高めるなどのリスクがあるからです。

喫煙者=再手術不可というわけではありませんが、インプラント埋入から除去、再手術の過程で喫煙していたのであれば、喫煙習慣を見直してみましょう。

まとめ

ポイントを指さす女性

今回は、インプラントの除去について解説しました。

インプラント除去の要因は、インプラント周囲炎、インプラント体の破損、インプラント体の体内への迷入、神経麻痺、金属アレルギーなどが挙げられます。インプラント除去は保険適用と保険適用外があり、保険適用の場合は3割負担で、インプラント1本あたり1,400円ほどです。インプラントに関するトラブルでお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

インプラントでお悩みの方や不明点がございましたら、神奈川県綾瀬市にある武内歯科医院にお気軽にご相談ください!

インプラント治療で後遺症が残ることはあるのか?治療の安全性とリスク

皆さん、こんにちは。綾瀬市にある武内歯科医院です。

インプラントの模型と治療前の女性

失った歯を補う治療には、入れ歯やブリッジ、インプラントがあります。

インプラントは、ほかの治療と異なり、健全な歯を削ることなく、物を噛んだ時の感覚が自分の歯と変わらないといわれています。

しかし、このような素晴らしいメリットと引き換えに、顎の骨にインプラントを打ち込む外科的な手術が必要です。そのため、インプラント治療にはさまざまなリスクが伴います。

今回は、インプラント治療に伴う後遺症やリスクと安全性について説明します。

インプラント治療で後遺症が残ることはあるのか?

2本のインプラント

インプラント治療で後遺症が出ることはあります。

ここでは、インプラント治療の安全性とリスクについて解説します。

インプラント治療の安全性

インプラント治療の安全性については、以下の2つが挙げられます。

人体への影響が少ない

インプラント治療では、チタンから構成されたインプラント体を埋め込みます。通常、人体に異物を埋め込むと免疫反応が亢進(こうしん)し、アレルギー反応が起こることがあります。

しかし、チタンはこれらの反応が起こりにくく、人体への影響はほとんどありません。

精密検査により事故が防止できる

インプラント治療を行う前の精密検査として、CT検査があります。

CT検査を行うことによって、血管や神経などの解剖学的な走行を把握することができます。この情報をもとに、インプラントをどの方向に埋入(まいにゅう)すると安全なのか、事前に調べることができ、神経損傷などの事故を防止することができるのです。

インプラント治療のリスク

次に、インプラント治療のリスクについて、解説します。

血管や神経の損傷のリスク

インプラント治療では、顎の骨に「インプラント体」とよばれる、歯の根っこに相当する金属を埋入します。

顎の骨には、血管や神経など、さまざまな構造物が存在しているため、インプラント体を埋め込む際に、血管や神経を傷つける場合があります。特に、下顎には下歯槽動脈(かしそうどうみゃく)、舌下動脈(ぜっかどうみゃく)、オトガイ下動脈といった太い動脈が走行しており、これらの動脈を損傷した場合は、顎の下に血が溜まり、窒息することがあるのです。

上顎洞の損傷のリスク

上の前歯から数えて5~7番目までの歯の根っこ近くには、上顎洞(じょうがくどう)とよばれる空洞が存在します。インプラント体を埋入する際に、この上顎洞を貫通し、傷つける場合があります。

感染症のリスク

インプラント治療では、基本的に2回手術を行います。その過程で、治療部位に細菌が入り込み、感染症を引き起こすことがあります。

インプラント治療のリスクが高い方

リスクをあらわすイメージ図

インプラント治療を行う際に、合併症を引き起こしやすいリスクの高い方を、以下にまとめます。

糖尿病の方

糖尿病は、血中のグルコースが細胞内に取り込みにくくなっているため、血中にグルコースが豊富に存在しています。グルコースは細菌の栄養となるため、血液のグルコース濃度が高い糖尿病の方は、感染症を起こしやすく、傷の治りが遅くなる傾向にあります。

糖尿病がある方でインプラント治療を希望される場合は、かかりつけの内科の先生に相談しましょう。

高血圧症の方

インプラント治療は外科手術であるため、精神的なストレスが大きく、手術中に血圧が上昇することがあります。血圧が高くなりすぎると、手術中に血が止まらなくなる場合や気分が悪くなる場合があります。

高血圧症と診断された方は、かかりつけの内科の先生に相談し、血圧をコントロールしたうえでインプラント治療を行いましょう。

骨粗鬆症の方

骨粗鬆症(こつそしょうしょう)は、骨の密度が低下し、骨が弱くなる病気です。インプラント治療では顎の骨にインプラント体を埋め込むため、骨量が少ないとインプラント体が骨と結合しないことがあります。

また、骨粗鬆症のお薬の中には骨の感染を起こしやすくなるものもあるので、場合によってはインプラント治療が行えないことがあります。

妊娠中の方

レントゲンやCT撮影で使用されるX線は、胎児に影響を及ぼすリスクがあります。

また、インプラント手術は時間がかかることがあり、術中に体調の悪化を引き起こすリスクもあります。そのため、妊娠中はインプラント治療を行うことができません。

喫煙する方

タバコに含まれるニコチンは、血管を収縮させる働きがあり、禁煙をしていない状態でインプラント治療を行うと、傷の治りや骨とインプラントの結合が遅くなります。

また、インプラント治療を行ったあとも、インプラント周囲炎とよばれる、インプラント周りの歯茎に炎症が起こるリスクが増加します。

血が固まりにくい薬を服用している方

心疾患などが原因で血栓ができやすい方は、血栓予防として血が固まりにくくなるお薬を服用していることがあります。

このようなお薬を服用されている場合、止血が難しくなることがあります。

インプラント治療による後遺症の事例

副鼻腔炎の女性

CTやレントゲン検査などで神経や血管の走行を確認することができるため、後遺症が起こることはほとんどありません。

しかし、ごくまれに後遺症を伴うことがあります。

代表的なインプラント治療による後遺症の事例を、以下にまとめます。

副鼻腔炎

上顎の骨には副鼻腔(ふくびくう)とよばれる以下の4つの空洞があります。

  • 前頭洞(ぜんとうどう)
  • 篩骨洞(しこつどう)
  • 蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)
  • 上顎洞(じょうがくどう)

インプラント体を埋め込む際に、副鼻腔の一つである上顎洞を傷つけた場合は、上顎洞に炎症が起き、副鼻腔炎を起こすことがあります。

副鼻腔炎は、鼻づまりや頭痛など、さまざまな症状を引き起こしかねません。

神経損傷

下顎には下歯槽神経(かしそうしんけい)とよばれる、お口の周りの感覚を認識している神経が走っています。

インプラントを埋め込む方向が悪いと、下歯槽神経を傷つけてしまい、お口周りの麻痺を引き起こすことがあります。ビタミン剤などの服用で改善することがありますが、後遺症としてしびれが残ることがあるのです。

安心してインプラント治療を受けるための歯科医院選び

医師と笑顔で会話する患者

ここまで、インプラント治療に伴うリスクや後遺症について説明しました。

インプラント治療を安全に受けるための歯科医院の選び方を、以下にまとめてみました。

症例数や医師の実績を確認する

インプラント治療は高度な専門性を必要とする外科治療であるため、歯科医院の年間症例数や担当医の実績が重要です。

年間の症例数が多く、日本口腔インプラント学会が認定する「インプラント専門医」が在籍している歯科医院かどうかなどを確認しましょう。

カウンセリングについて確認する

インプラント治療には、さまざまなリスクが伴います。

しかし、これらのリスクを説明せず、安易にインプラント治療をすすめる歯科医院には注意が必要です。インプラント治療を始める前のカウンセリングが丁寧に行われているかを確認しましょう。

安価すぎる値段設定には注意する

インプラント治療の相場は約30〜40万円ほどです。

しかし、歯科医院の中には、相場よりかなり安い10万円台で治療を行っている歯科医院も存在します。このような価格帯の場合、CT撮影などの大事な検査や治療後のアフターケアを行っていない可能性があります。

医療設備を確認する

インプラント治療を安全に行うためには、治療を行う前の精密検査が重要といえます。特に、インプラントをどの位置に埋め込むかを確認するCTの存在は、とても重要です。

また、血圧などの変化をきちんと把握するために、必要な機材や手術中の精神的負担をやわらげることができる鎮静法が行われているか、医院のホームページなどで確認しましょう。

アフターケアについて確認する

インプラントは人工歯であるため虫歯になることはありませんが、インプラント歯周炎とよばれるインプラント周囲の歯茎の炎症が起こることがあります。

インプラント歯周炎が悪化すると、インプラントを除去する必要があります。このようなトラブルを防ぐため、歯科医院が行う定期的なメンテナンスが必要となるのです。

インプラント治療後のメンテナンスをしっかりと行なっているか確認しましょう。

まとめ

ポイントを指さす女性

今回は、インプラント治療のリスクや安全性などについて説明しました。インプラント手術には、神経損傷などさまざまなリスクが伴います。

しかし、インプラント治療前の精密検査などを行い、事前の治療計画がしっかりしていれば、このようなリスクは比較的低いといえます。そのため、医療設備や治療実績などを参考に、少しでもリスクの少ない歯科医院を選びましょう。

インプラント治療でお悩みの方や不明点がございましたら、神奈川県綾瀬市にある武内歯科医院にお気軽にご相談ください!